道具愛「第1回:歯車のお化け」


◆一つのミスが大怪我を招くか、下手をすれば命の危険が伴うサーカス。だからこそ、難しい演技が決まったとき、なにものにも代え難い興奮を呼びおこします。その演技を支えるサーカス道具は、全てが強固で機能的、ほとんどがオーダーメイドで作られる物ばかりです。リハーサル期間は工事現場用品店や登山用品店に走ることもしばしば。愛すべきサーカス道具の数々を紹介して参ります。

サーカスのクライマックスを飾る「ハイワイヤー(綱渡りの一種のワイヤー渡り)」や「空中ブランコ」では、演技者が歩くワイヤーや、安全ネットに適度なテンションがかかるように調節するのが、リハーサル時の重要な作業の一つになります。このテンションのかかり具合で、演技の成否、演技者の安全が左右されます。最初に強い負荷に耐えられるアンカーをとれる場所を、会場内に見つけなければなりません。舞台道具と2点以上のアンカーを、ワイヤーや綱で結び、きりきりと締め上げてテンションをかけていきます。この締め上げ作業は大抵ショウの途中で行なわれるので、出来るだけ短時間で行なわなくてはなりませんし(1例写真)、また、締め過ぎ、締めっぱなしでは道具を痛めてしまいます。この作業の為にいろいろなサーカスグループが、自分たちがもっとも使いやすい道具を、持ってきます。ほとんどのグループは、金車を使って、

数人の男たちで引っ張って締め上げるか、

最近では工事現場などでも使うチルホールという片手で操作できる手動のウィンチを使用したりします。

さて、コラム「ウズベキスタンサーカス紀行」で紹介したアリエーヴァ・サーカスは、ハイワイヤーの設営用に、なんともいかめしく、見たことが無い装置を日本に持ってきました。
それは…

これです。

もう一つ角度を変えて。

この巨大な歯車を使ったレトロな機械を設置し、ハンドル回してきりきりとワイヤーを締めていきます。

その結果、こんな演技にも耐えられるテンションをワイヤーにかけられます。

なんとも質実剛健で機能美に溢れた装置です…。
初回にして最終回かもしれない「道具愛」の第一回目、最後までありがとうございました。

この記事を書いたひと;辻 卓也

株式会社アフタークラウディカンパニー勤務。サーカスプロデューサー。ロシアやウクライナ、東欧などからサーカスアーティストの招聘が比較的多い。その他、ショウの演出やフライヤーデザインなどを行うことも。長身。

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