サーカス・オズ 再び


◆前作に続き、サーカス・オズの新作を観に、再びオーストラリアへ。移転したての、稽古場を兼ねた立派なオフィスも訪問しました。 新作は、ヴォードビル色の強い作品で、タイトルが「But Wait…There’s More!」。「ちょっと待って…もっとあるから!こんなに素晴らしいものが、なななんと9.99ドルです!」 お気に入りの、アボリジニ出身アーティストも、前作に続き出演。 そして、コアラが?? 最新のサーカス・オズ情報です。

2005年に『99% unknown』という作品で招聘した スウェーデンのCIRKUS CIRKÖR(サーカス・シルクール)の新作『limits』

*2014年に観に行った『Knitting Peace』の次の作品になります。その時の報告はこちら(準備中)。

今回は、ジーロングというメルボルンから車で約1時間ぐらいのところにある小さな町での公演で、ジーロング市の買い公演。町のパフォーミング・アーツ・センター(約800席)での公演でした。初演は今年の6月でしたが、やりながら内容の変更はいろいろでているようです。サーカス・オズは、いつも2年スパンで作品を変えているそうなので、この新作は、2015年3月までということになります。 前作は工事現場を模したような作品でしたが、今回は「But Wait…There’s More!」というタイトルで、「ちょっと待って…もっとあるから!」という、広告などでよく使われる決まり文句です。

(新作のパンフレットより)

「こんなに素晴らしいものが、なんと9.99ドルです!」というような歌があったり、衣装がバーコードだったりと、広告宣伝のお約束がジョークになり、ヴォードビルのような雰囲気の中で進行します。前の作品よりも演劇的な要素もあり、進行役の歌手やクラウンが、かなりしゃべります。(前作もOZジョーク満載でしたが)。 中には、オーストラリア人にしか分からないジョークもあったり、歌手の女性がアボリジニ出身ということもあり、アボリジニ訛り(?)の英語でわざとしゃべったりするので、観客の大笑いについていけないことも。 それはさておいても、内容はとても楽しく、洗練されていない(褒め言葉です)、どこにも干渉や影響をされていないオーストラリアらしいところが、私はとても気に入っています。前作のサーカス・アーティスト10名の内、8名が入れ替わり、その8名の内2名は、過去の作品に出演したことがあり、6名は初のオズ出演ということになります。 その殆どが、NICA(メルボルンにある国立のサーカス学校)出身です。1名がギター演奏もしますが、ミュージシャンは前回と同様2名で構成されています。

(新作の舞台美術)

サーカス芸は、フラフープ、デュオの一輪車、BMX 、フライング・トラッピーズ、固定のシングル空中ブランコ、ジャグリング、ハンドアクロバット、チャイニーズポールなど。恐らくこれらも、やりながら変更されていくのだと思います。初演であったものが、すでに今回なかったり、新たなものがあったりしました。中でも群を抜いていたのが、ボール・ジャグリングの女性です。前半彼女は、おとぼけキャラで、クラウンの役所を演じているのですが、これがまたユニークです。何もできない、何をやってもうまくいかない役所なのですが、本来こういう性格なのかと思うほど、そのおとぼけぶりには磨きがかかっていました。 そして後半、ボールのジャグリングで見事に化けるのですが、ボールのマニピュレーションの技術を見せるというよりは、ボールと自身の身体とをうまく使った振り付けになっており、とてもうまく構成された作品で圧巻でした。聞くところによると、物語を作って作品を構成しているそうで、それにあたっては、振付家やスタイリストなどを自分で雇い、作品を作ったということです。高度な技術を持ったうえでの作品作りということを、感じさせる作品でした。 後半、オレンジの耳がついたかぶりものを、メンバーがつけてでてくるシーンがあるのですが、このキャラクターを、私たちは“コアラ”だと思い込んでいましたが、実はクラウンだということでした(!)。 写真を掲載できないのが、非常に残念ですが、私たちが“コアラ”だと思ったキャラクターは、オーストラリアでは、典型的なクラウンなのだそうです。摩訶不思議です。 そして、舞台背景にも顔を模したものが2つあるのですが、あの顔はなに?と、聞いたら、やはりクラウンだということでした…。 サーカス・オズは、メルボルンの市内にある郵便局の跡地を本拠地にしていましたが、今年の2月、新しいビルに移りました。技術系の専門学校だった場所のようで、その改装費は数十億円!すべて国が負担してくれたそうです!

(衣装製作室)

しかも家賃は破格に安いし、広いリハーサル室は2つあるし、敷地内にはなんと、購入したばかりのシュピーゲルテントまでありました。リハーサル室が2つあることで、ひとつは外部のフリーのアーティストに貸し出すこともできます。

(リハーサル室) シュピーゲルテントは1920年創立の伝統あるサーカステント式のショー舞台ですが、最初にベルギーから購入した伝統サーカス団から買い取ったということでした。このシュピーゲルテントでも、ショーが行われます。私は残念ながら見ていませんが、フランスのCirque OやQue-Cir-QueをプロデュースしたUeli Hirzelが“アラジン・パレス”というショーで成功したのも、このシュピーゲルテントだったのではなかったかと思いました。

(シュピーゲルテント外観)
(シュピーゲルテント内部)

サーカス・オズを日本に呼べたらと思いながら、格安のJet Starに乗り込み、飛行機小さいけど大丈夫だよねと、ここのところの飛行機事故を思い出し不安になり、10$支払って映画を見まくって帰国しました。(大野洋子)

この記事を書いたひと;大野 洋子

㈱アフタークラウディカンパニー勤務。サーカスプロモーター。ヨーロッパ、アメリカ、南米、アフリカなど様々なサーカスや、他のパフォーミング・アーツのアーティストらを招聘している。海外の人にはよくオノ・ヨーコと勘違いされている。動物好き。

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